これは、「大丈夫」の続編です。

      君の手



     「てっちゃん。」

     「ん〜?」



     雑誌を読みながら、生返事を返すてっちゃん



     「最近ちゃんとはどうなの?」

     「・・・・」

     「聞いてる?」





     返事がないので雑誌のすみをトントンと指でつつく


     するとてっちゃんは勢いよく雑誌を閉じて

     立ち上がった


     「なんで?」

     「あ、聞いてたんだ。いや、どうかなって思って。美樹よく話してるんだけど。」

     「美樹ちゃんが聞いてんじゃないの?あいつから。」

     「いや、ちゃん美樹にもあんまり話さないみたいで。」





     何か言い渋ってる・・・?
 

     てっちゃんは落ち着きなく楽屋中をうろうろする


     近くにいた黒ぽんが不思議そうにてっちゃんを眺める





     「・・・会ってないの?」

     「・・・」
 







     やっぱり・・・







     「会ってないんだ?」

     「・・・しょうがねえじゃん。俺ら時間合わねえんだよ!」








     気が立ってるなぁ
 



     禁句だったか?








     いつもの俺なら、こういう時のてっちゃんはほっとくけど


     数日前の美樹の台詞が蘇る








     『ふたりうまくいくかな・・・。いざという時頼れるの陽一だけだから!』








     友達思いの美樹は


     てっちゃんと長いつきあいである俺を


     ふたりの仲をとりもった事から、かなり頼りにしているらしい





     意地っ張りなふたりに危機が訪れたら


     どうにかしてやってくれというわけだ








     まぁ・・・美樹に頼りにされて悪い気はしないけどね・・・
 

     むしろやる気になってしまう











     ってことで・・・


     「てっちゃん今夜空いてる?」

     「なんで?」

     「ちゃんに会いなよ。」

     「簡単に言うなよお前ぇ・・・」





     相当時間合わないんだな



     はなっから諦めてるみたいだ





     「いやいや、今日実は俺、美樹と食事でもしようかって言ってたんだけどね、

     美樹に頼んでさ、ちゃん誘ってもらおうよ。」

     「へ?」

     「だから、4人で何か食べに行こう。適当にふたりの時間作ってあげるから。」

     「・・・いいの?」





     ほら、口元見ればわかるんだ


     ちょっとうれしそうなてっちゃん





     「いいよ。俺達はどうせ家一緒だからずっと一緒だし。今夜くらい。」

     「なんかそれムカつくなぁ。」

     「あ、嫌ならいいんだよ?」

     「いやいやいやいや・・・」

     「じゃ美樹に電話してみるから。いいね?OK?」

     「・・・・・・・OK。」

     「(笑)」














     「陽一!こっちこっち。」

     新宿のビル40階のレストランを予約して


     先に美樹とちゃんが到着していた





     時刻はPM7:00


     ちょうど夕飯の時間帯だ








     「美樹!待った?」

     「ううん。今来たとこ。ね、。」

     「うん。」

     「よかった。ちゃんごめんね、仕事忙しかった?てっちゃんが

     会えないってイライラしてたからね、つい・・・」



     てっちゃんはちょうど店に着くなりトイレに行っていていない



     「いえ、こちらこそすみません。気使わせちゃって・・・

     今日はふたりで食事だったんでしょ?美樹もごめんね。」





     そう、それは俺も美樹に謝りたかった


     ふたりで外で食事するのは実は久しぶりのはずだったから








     「いいのよぉ。ふたりがうまくいくならそれで!ね、陽一。」

     「ん?うん。」











     よかった・・・どうやら怒ってはいないみたいだ

















     席について少ししたらてっちゃんが戻ってきた


     わざとちゃんの隣の席を空けておいたもんだから


     てっちゃんは少し困った顔をした








     「よぉ。」




     席に着いててっちゃんは居心地悪そうに、


     けど少し嬉しそうにちゃんにそっけない挨拶





     「どうも。」




     ちゃんはちゃんで更にそっけない挨拶








     悪いが恋人同士には・・・ちょっと見えないな


     美樹も少し不安そうな顔になった


     ・・・俺はふたりより美樹のその表情に不安になる





     てっちゃんは更にそっけない感じに声をかける




     「、今日仕事は?」

     「ん?・・・早く終わったの。」

     「ふぅん。」








     ・・・・



     あぁ、会話が終わってしまった


     てっちゃんもっと喋りなよ!


     ・・・って思うけど、





     てっちゃんは黙々と食べ続け


     ちゃんは何事もないように美樹と雑談している


     美樹はちゃんと笑顔で話しているけど


     きっと気にしているんだろうな







     美樹の食がほとんど進んでいないことに気付いて


     なんだか少し焦りが出る





     美樹はたまに心配事があると


     全く食事に手をつけられなくなったりするんだ








     今も、きっとそんな状態だ








     うまくいかないふたりより、正直美樹の方が心配になってしまう











     よし・・・








     「ねぇ、後でさ港の方行ってみようよ。今ライトアップされてるらしいんだけど。」

















     レストランを出て港に向かう途中


     俺と美樹は俺の車で、


     てっちゃんの車にはもちろんちゃんが乗り


     車2台で港に向かう








     「あのふたり、どうなんだろうね。」




     車内で最初に口を開いたのは美樹




     やっぱり気にしてたんだね




     「どうかな。てっちゃんがもっと頑張るべきだと思うね。」

     「・・・まぁね。けども色々聞いたりすればいいのになぁ。」

     「例えば?」

     「お仕事どうだった?とかさ、色々。」

     「美樹は聞いてくれるよね、いつも。」

     「わ、私は・・・そりゃ、知りたいから。」





     急に自分の話をふられて突然助手席で照れ出す美樹





     「でもね!だって知りたいと思うの!村上さんのこと。」

     「うん。」

     「聞くタイミングがつかめないだけだと、思うの。」

     「なるほどね・・・」







     本当は美樹を乗せたまま、このまま家に帰りたかった


     あのふたりは敢えてふたりにしておいた方が


     いい気もしたし


     何より照れた美樹がかわいくて





     正直なところ、すぐにでも家に帰って・・・








     自分のものにしてしまいたい衝動が、あった








     それができないから、少しだけわがままを言わせて





     「美樹?」

     「ん?」

     「手、握ってくれる?」

     「・・・え?なんで?」

     「今日さ、ほんとはふたりのはずだったじゃない?」

     「・・・うん。」

     「勝手に4人にしちゃって、美樹怒ってるかなとか思ったけど、怒ってなくってさ?」

     「うん・・」

     「今気付いたんだけどねぇ。」

     「うん。」

     「一番がっかりしてるの、俺かもなって。」



     かなりの本音だった



     「陽一・・・」

     「手・・・握ってくれないかな?」

     「い、今?」

     「うん。今。」

     「・・・いいよ。」





     美樹は俺のハンドルを握っていない方の手を








     優しく、弱く、握ってくれた














     「わぁ〜〜!綺麗!」







     見事にライトアップされた港について


     車を降りるなり美樹は元気よく駆け出した


     少ししてもう一台の車も到着し、てっちゃんが降りてくる





     ・・・・・・


     あれ?ちゃんが降りてこない


     美樹もそれに気付いて不思議そうな顔


     てっちゃんが足早にこちらに近づいてきた





     「てっちゃん、ちゃんは?何で降りないの?」

     「ん。いや・・・。」







     いつの間にかサングラスを外したてっちゃん


     珍しく言葉につまっている





     「あの、悪ぃんだけどぉ・・・」

     「・・・何?」

     「俺ら、帰っていいか。」

     「え?帰る?」

     「・・・うん。」





     「村上さん!」







     美樹がはじかれたように切り出した







     「帰るなんて言わないでください!」

     「へ?」

     「あの・・・は、ちょっと素直に気持ちが言えないけど、村上さんの事、大好きなんです!!」

     「あの、美樹ちゃ・・・」

     「いつも村上さんの体調とか気にしてるしっ!・・・」

     「美樹ちゃん?ちがっ・・・」

     「今日だって仕事早く終わったなんて言ってたけど、本当は無理言って

     早退したんです!村上さんに会いたくて!」

     「聞いたよ。」

     「・・・・え?」




     てっちゃんの一言に美樹の勢いが止まる





     「いや、今、から聞いた。車の中で。その、帰るってのはぁ・・・そうじゃなくて・・・」




     ・・・まさか?





     「・・・俺の家、行こうかって話に・・・」

     「・・・え???」


     うまく状況が飲み込めない美樹







     つまり・・・


     「つまり、セッティングはもう必要ない、と??」

     「ん、まぁ・・・そういう、事。」








     今サングラスをしていないせいか


     いつもより余計にてっちゃんの感情がよくわかる











     めちゃくちゃうれしそうだ











     「えぇぇ!」





     少し遅れて美樹が気付いて


     安心と、驚きと、喜びの声をあげる








     「なんだ・・・そうなんだぁ!」






















     ふたりは車に乗って帰った行った








     俺たちは、せっかくだから港のキレイな夜景を見ていこうと


     その場に残る








     「よかった。本当に。」


     「うん。」


     「こないだのさ、ふたりを会わせる時より焦っちゃった、今日。」


     「だろうと思った。」


     「え?」


     「だって美樹、さっき全然食べなかったでしょ。」


     「・・・うん」


     「心配事してる時は、美樹全然もの食べないから。」


     「・・・気付いてたの?」


     「当たり前。」








     少し見破られた顔をして


     美樹は下を向く














     やさしいんだ、君は























     下を向いたまま、美樹は小さく呟く








     「・・・ねぇ陽一?」


     「ん?」


     「寒くない?」


     「ん。あんまり。」


  








     少し意地悪な返事をしてみる





     「・・・なんだか、ほっとしたら疲れちゃったな。」


     「うん。俺も。」


     「・・・陽一、手、握ってくれない?」


     「ん?」









     聞こえなかったふりをしてみる











     「・・・私も、手を、握ってほしい。」














     下を向いたまま、美樹はもの凄く恥ずかしそうにそう言った

















     いつも一緒にいて


     いつも一緒にいると











     手を握ることなんて忘れてしまいそうだ








     だからこうして、たまにただの恋人同士のように





     外で会って、こうして温めあおう























     握った美樹の手はいつもより冷たくて








     余計に美樹の存在を感じて、感じて




















     感じられて仕方がなかった



























○●Thank you very much!!●○



1400hit踏んでくださった美樹さまへ!
めちゃくちゃお待たせしちゃってごめんなさい!
しかも、私(?)とてっちゃんまたおふたりの邪魔してますよ!(汗)
しかもあんまりリクの「ダブルデート」がなされてませんね。
ちょっと反省、、、でもおふたりにはなるべく甘くラブAでいてもらいました!
いかがでしょうか??美樹さん!(どきどき)
続編というか、もう第一弾から読まないと話が判んなくなってますね(笑)
サブタイトルでも付けようか検討中です!


キタマニの美樹さんへ>>壱川ともより。




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