ムネのイタミ





がいなくなってから

一週間過ぎた



冗談にしちゃ やりすぎなんじゃないか?

そろそろ戻って来いよ

さすがに笑えねえぞ



お前は俺を驚かせるのが好きだったもんな

いつも俺に驚かされて、騙されてばかりで

悔しがって

いつか、俺が飛び跳ねるくらいビックリさせてやるんだって

意気込んでたもんな





でも、俺は全部冗談だったんだぜ?

お前が本気になる前に

必ず種明かししてきたじゃねえか

お前もそろそろ

種明かしして

俺んとこに姿を見せてくれないか











ガチャン..



まだ目も覚めきらぬ明け方

玄関のドアが閉まる音がした

・・・気がした



少し眠りの世界と現実を

行ったり来たりした後

俺の脳はようやくその音を認知する


「・・・!!!!??!?」



俺はまだ寝起きで

声がかすれたことも気にせずに

布団を蹴り上げて

寝室を飛びだした



扉を開けると

いつものソファにが座っている

ちょこんと座って

いつもの笑顔で俺のほうを見てる

・・・ほんとに?

「ほんとに・・・?」



俺は情けないほどに小さな声で

に声をかけてみた

むやみに近づくと、うっかり消えてしまう気がして



「当たり前じゃない。あたしよ。」

「え・・・どこ行ってたのお前!?一週間も!」

「どこって。ちょっと。」

「ちょっとって何だよ・・・あーッもう、心配させんなよ!」

「心配した?」

「当たり前だろ!」


それまで一歩も前に出なかった足で

にかけより

その細い体を力いっぱいに抱きしめる


「・・・痛いよ、てっちゃん。」

「・・・」

「心配してくれてありがとう。嬉しいよ。」

「・・・」

「驚かせたかっただけなんだ。てっちゃんを。」

「・・・ほんとか?」

「ん?」

「ほんとに、なのか?」

「そうだよ?」



も、そっと手を差し出して

俺の背中にゆっくりと腕を回した



「・・・ただいま。てっちゃん。」

「・・・」









俺はずっと、ずっと


を抱きしめた



何十秒・・・いや、何分たっただろう

俺はが身じろぎをしたのに反応して

腕の力を少しだけ緩めてみた



「・・・っ」


の唇が

強引に俺の唇に迫る

懐かしいキス



・・・でも、俺は違和感を覚える




唇が離れてから

俺は、いつものように抱き寄せずに

顔を離して彼女の顔を覗き込む

が瞬きをした瞬間に

涙が一粒、もう一粒・・・

頬をつたって落ちてゆく



は無表情だ

は微笑まない

はもう、瞬きすらしない




「・・・。」

「ごめんなさいてっちゃん・・・あたし・・・」



最後ののセリフが

何だかステレオの中の音声のように

曇りがかってよく聴こえない



、聴こえねぇ・・・何泣いてんだよ?」

「・・・さよぅ・・ら・・」

「え!?聴こえねぇよっ、やめろよ・・・そんな顔すんな!!」















がばっ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「・・・何だ?」


起き上がると

もとの寝ていた部屋だった

静まり返った部屋

窓から明け方の弱弱しい光だけが差し込む


何か聴こえると思って耳をすますと

それは自分の心臓の音だった



?」



の姿がない

たった今まで抱き寄せていた体

くちづけていた唇

泣いてた瞳

俺を呼んでいた声



俺を呼んで、ごめんと言った

の声・・・



「・・・っ!!!」



俺は今度こそ飛び起きて寝室を飛び出した



















ソファには

誰も

座ってはいなかった



俺は

膝から

崩れ落ちる



自分の手で

胸を

力いっぱいに掴む




彼女は

もう

戻ってはこない



「・・・い、てぇ」


痛い


胸が

とてつもなく

痛い


痛い、痛い、痛い、痛い

・・・・・・・・痛い




鼻の奥はやけにツンと痛むのに

こんなにも歯をくいしばっているのに


俺の目からは一粒も涙が出てこない



あぁ・・・

切り刻まれていくみたいだ


まるで

ナイフで、少しずつ少しずつ

胸を切りつけられていくようだ



それは、一突きに刺される方が

断然に楽なような痛みだった





「・・・?」



最後の望みのように

彼女の名前をゆっくりと呼んでみる





返事はない















俺は足をひきずるようにして

寝室に戻った



ばかやろう・・・

こんな広いベッドで

これからひとりで寝ろっていうのかよ


何にも言わずに消えやがって

夢の中くらい

笑って出てこられねえのか


どうして

せめて笑って出てきてくれなかった



お前の

ゆめの中の涙のせいで

今、俺の胸の痛みがやまない







俺はいつまでも

いつまでも

広すぎるベッドの上で



波のように幾度も押し寄せる痛みに

ひたすら耐えて

耐えて


耐えていた、、








俺の前から


姿を消した。







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Thank you very much!!

33000hit踏んで下さったメイさん!!
リクエストありがとうございます。
そしてお待たせしました、リク作品をアップさせていただきます。
リクはてっちゃん作品で「痛い」をテーマに、でした。
彼女が何故、どこへ、どんな風に消えたのかは皆さんの
ご想像にお任せしています。
別れがやってきて、部屋をそっと出て行ったのかもしれない。
あるいはもうこの世から消えてしまったのかも・・・
わかってはいるものの心が受け入れてくれない。
胸が痛むのは、やっぱり大切なものを失った時ですね。
少し、暗めな話になっちゃってごめんなさいm(_ _)m
いかがでしょうか???

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