♪
10日ぶりの合図を鳴らす
少しして、彼女が窓を開けた
10時をまわっているので暗くてよく見えないけど
泣いていたようにも見える・・
ズキン、、
胸が痛んだけれど
俺は俺に気付かないフリをする
「てっちゃん・・・何処に行ってたの?」
「・・・わりぃ。最近違う場所で歌ってたんだ。」
「違う場所?」
「そ、ちょっといつもより狭いトコ。」
「・・・遠い所?」
「・・・ま、ある意味遠いかな。」
「え?」
「レコード会社にさ、話持ってったんだ。1曲でいいから聴いてくれませんかって。」
「本当!!?それで?!」
「ん、聴いてもらえてさ。まだまだ話が大きくなるようなトコでは聴いてもらってねぇけど。」
「そうなんだ。・・・うまくいきそう!?」
「一応さ、聴いてくれた人は、好感触って感じ。後は愛想だね。」
「そんな簡単にいくの?」
「うそうそ。愛想なんかでうまくいったらとっくにデビューしてる。」
「だよね(笑)」
いつもより暗い色のサングラスをしているせいか
てっちゃんの気持ちが
うまく読み取れない・・・
噛み合わない沈黙が
やたらと続く・・・
「私ね、祈ってたよ。ずっと。」
「何を?」
「てっちゃんの夢が叶いますようにって。会えなくて寂しかったけど・・・夢に向かってたんなら安心した!」
「・・・ん。」
「うまくいくといいね。」
「・・・ん。」
「私ね!てっちゃんの夢叶うなら、何だってするよ!てっちゃんの夢は私の夢だもの。」
「・・・・」
「私にできる事なんて何にもないけどさ、もしてっちゃんがデビューしたら私ファン第一号にしてね!」
「ハハ・・ファンに一号も二号もねぇって。バカだな、お前・・」
「・・・ハハ、そっか。」
この沈黙、どうすんだよ
どうすんだよ、俺
言うつもりで来たんだろ?
きっぱり言うつもりで、
今夜は来たんだろ?
ここで言わなきゃ
お前の夢はそこで終わっちまうぞ?
「てっちゃ・・・」
「なぁ、!」
「なに?」
「俺の夢さ、叶うならさ、その・・・何でもしてくれるって?」
「うん!もちろん!!あ、けど、レコード会社説得しろって言っても無理だよ?」
「んな事頼むかよ。大体お前にそんな事任せたら不安でしょうがねぇよ。」
「ひどぉい。」
「・・・ハハ。・・・簡単な事だよ、もっと。ずっと・・・」
「なぁに?何でも言って!」
言え・・・言えよ!
早く言っちまえ!!!
「・・・・」
「・・・?」
「俺のこと、忘れてくれ。」
「・・・え。」
「忘れろ。俺のことは。もうここには来ない。」
「・・・てっちゃん?」
「この街ではもう歌わねぇし、お前の好きなあの曲も歌わねぇ!」
自分でも
声が掠れたのがわかった
「てっちゃん・・・どうして?意味わかんない。」
「お前と会うと、俺の夢は終わる。」
「・・・」
「・・・お前がお前であるために、お前とは会えない。」
「・・・え?」
思い切って俺は
に顔を上げた
「お前の親父さんさ・・・俺ら5人の将来ぶっ潰すのなんて、簡単な事なんだってさ。」
の心がやぶれる音が
聞こえるかと思った
「・・・・こないだみたいに、殴られるだけならさ」
「殴られるだけなら、何発だって殴られてやるよ。」
「けど、・・・俺だけの夢じゃねぇんだよな。」
もう二度と、
の顔は見れないと思った
一度下を向いたら
引力に逆らえない涙が
次々に冷たいアスファルトに落ちたから
このままの顔が見れないままに
どこか暗い森にでも消え失せちまいたかった
約束の一個も守れない男
冷たいアスファルトに伸びる俺の影
「・・・・てっちゃん。」
「・・・・」
「てっちゃん泣かないで。」
「・・・・」
「ねぇ、てっちゃん。お願いがあるの。」
「・・・?」
俺は上は向かずに、少しだけ顔を上げた
「最後に、本当に最後に、少しだけ、歌を歌ってほしい・・・。」
の涙に耐えた声
きっと最後になるであろうの部屋の窓を
俺はサングラスを外して見上げた
俺よりもまっすぐこちらを見たが
まるで女神みたいに俺を見下ろしていた
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I'm with you どんな時も
I'm with you どこにいても
今以上 そばにいるよ
It's my promise だからこのまま
I'm with you ためらわないで
この広い世界中で
たった一人の 君を生きて
keep smilin' it's just your promise
I'm with you It's just my promise...
「・・・何ていう、曲?」
「promise.レコード会社に持ってった曲。」
「素敵な曲ね。・・・本当に。」
いつかお前に
本当に果たせる約束をしにくるから
それが今の
こんな俺ができる
ちっぽけな約束だから・・・
最後になんてしたくない
最後になんてしてたまるかよ・・・
最後じゃないけど
最後の
君に
Last Serenade.
○●Thank you very much!!●○
3400hit踏んでくださったさまへ!
大変たいへんお待たせしました!!!
の、てっちゃんと現代版ロミジュリ!というリクでした。
はじめは結構悩んだんですが、書き始めたら楽しかった!
なかなか問題作になりましたが、いかがでしょうか??
細かい設定は露呈させちゃうと逆に現実味がなくなる気がして
何で反対されてるか、とかいう部分は想像して下さいって感じです。
そういうの文で説明するの苦手なんです・・・。
感想いただけると嬉しいです☆
へ>>青也より。
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