リズム








俺たち、ずっと一緒だった


私たち、ずっと一緒だったね





俺から「リズム」が消えたとき、

どんなにビートを刻んでも

「リズム」が耳に体に戻らないとき




私の辛いとき、

サイクルが乱れに乱れて

生活の「リズム」が崩れて

携帯もOFFにして、閉じこもっているとき








そっと肩を抱いて






夜中まで話を聞いて











あなたは私の


お前は俺の





「リズム」を正常に してくれた













RRRRRRR





『着信 ヒロ』





背面画面をのぞいて

まっさきに手を伸ばす

作りかけのピラフも

出しっぱなしの水道も放って




ピッ


「もしもし?」

「あ、ヒトエ?」

「うん、どうした?」

「こないだ俺の部屋で飲んだとき、お前リング置いてっただろ?」

「あ!うん、そうそう!ずっと探してたのよ、やっぱりヒロんとこかぁ。」

「やっぱな。オンナモンはお前のだろうと思ってさ。」

「ん、今度取りにいくよ。いつが空いてる?」

「地方はもう終わってるから、あさってってとこかな。」

「ん、判った。じゃ取りに行くよ。何か食べる物持っていこうか?」

「お!助かる!」

「どうせロクなもの食べてないんでしょ?」

「あ、判る?」

「うん。じゃあ持ってくね。ピラフがいいでしょ?」

「おう!エビピラフな。」

「はいよ。じゃぁね。」

「ん。」







いつものように用件のみの

シンプルな通話

それは私たちの間に

濃厚な愛の形が存在しないせい

彼がいつも刻み続ける軽快で

シンプルで、それでいて深い、深い

「リズム」のような





私達は「友達」…










携帯を閉じて

水道を止める

ピラフの火を再び点ける





あなたとの時間は終わって

私の生活の「リズム」が戻る













あなたと一緒にいすぎて

私はピラフが大好物よ









あなたの「リズム」を知ってから

私の部屋ではR&Bで溢れてる

どれもこれも、

あなたが聴かせてくれたもの




そんなに有名ではないにしろ

日本中で「リズム」を刻み続ける

あなたの大好物を知るのは

どうか私だけでありますように…







なんて

あなたの重荷にだけはなりたくないのよね

この気持ちを胸に秘めるのも

少しの喜びになった





でも、



でも本当はね


本当は、


その上を、望んでる











2日後―




「おい、ヒロ。何やってんだ。行くぞ。」

「は?どっか行くのかよ?」

「JINさんとこに顔出しに行くっつっただろ。」

「えっうそだろ。知らねえよ、聞いてねえよ俺。」

「んじゃ今知れ。JINさんがライブ見に来てくれてたらしいから、今からアイサツに伺うんですぅ〜。ほら、行くぞ。」

「…俺も行かなきゃだめ?」

「当たり前だろ。メンバー全員で行くのが礼儀だっつの。」

「…」

「何だよ?なんか用事か?」

「…いや。行こう。」











ヒトエ、待ってるかもな…











午後21:00




ヒロの部屋に行ってみたけど

電気はついてなくて、鍵もしまっていた





「早く来すぎたかな。」





少しの落胆を独り言でごまかして

私は扉の前で帰りを待つ









『リングおいてっただろ?』



『やっぱりな。オンナモンはお前のだろうと思ってさ。』








2つ目のせりふは、あなたの部屋に私以外の

女は出入りしていないってことだね





それにしても

あなたはやっぱり気付いてないね

あなたの曲の中の詞の







『シンプルな俺たち


シンプルなお前には


シンプルなシルバーリングがよく似合う』







が、どうしても心にしがみついて

離れなくて

出かけるたびに無意識に

『シンプルなシルバーリング』を探してて

気付いたら買ってた

まるで「恋人」からもらったみたいに大事にした

あなたの部屋に忘れていったのも

半分酔いで

半分わざとだった

私の気持ち、ごくシンプルに気付いて欲しい











時刻は午後22:00



1時間経ってもヒロは帰らない








ヒロのアパートは冷めたコンクリートの匂い

もっと明るくてキレイな所に引っ越せばいいのにって

言っても

あなたは絶対にこの冷たい部屋を手放さないね





あなたの全ての「リズム」に絡みすぎて

私はピラフが好きになって

この冷たいコンクリートにも、肌が慣れてしまったよ








あなたの「リズム」は

すっかり私の心の深い部分に絡め取られてる

あなたの心に私という存在は少しでも

刻まれてるのかな…?

















「ヒトエ…」











!!!








今一番聞きたかった声が

耳に届いた





「ヒロ…おかえり。」





息を切らしたあなたは

ポケットから家の鍵を取り出しながら

こちらに歩いてくる





「いつから待ってた。」

「9:00、かな。」





答えるとあなたは自分の腕時計を覗いた後

小さく舌打ちする









「待たせて悪かったな。」


「ううん。」



ガチャ

鍵の空く音



「…入れよ。」

「うん。お邪魔します。」











入りなれた部屋

少し汚い部屋

煙草の匂いのする部屋

グレーの壁、黒のカーテン

あなたの部屋





「ヒロ、ピラフ冷めちゃったかも。」

「あぁ、いいわ。食べる時レンジかけるから。」

「…今は食べられない?」

「あ…。あぁ、今は…」





少し自分を責めるような表情のヒロ





「リング、そこ、コンポの上。」

「あ、うん。ありがと。」








リングを指にはめる私を

あなたは鋭く見つめている





「なに?」

「いや、それ気に入ってんだな。」

「うん、まぁ。「シンプル」でいいでしょ?」

「あぁ。似合ってる。「シンプル」でな。」

「…」







似合ってるなんて初めて言われて

指輪をはめた指と心が

カッと熱くなる





少し恥ずかしくて目をそらすと

足元には彼がいつも「リズム」を造り出す

仕事用のテーブルと、

散らばった譜面たち








「新曲練ってるの?」

「ん?あぁ。」

「見ていい?」

「あぁいいよ。」





たくさんの走り書きだらけの白い紙

2枚、3枚、、、

そこには詞がたくさん生まれていた











…?








その中で、いやに濃く大きく

書きなぐられた

一節

















『HxH on the Beat』














………?





「…あっ!!やっぱダメ…見んな!」








ヒロは突然私の手から紙を取り上げた





「読んだ!?」

「え…」

「読んだんか!?」

「え、ちょっと…けど、そんなに読んでないから大丈夫だよ。」

「…」

「HxH on the Beatってとこだけ…」

「読んでんじゃんかよ!!?」

「えっ、ご、ごめん!…」

「〜〜〜…っ」







ヒロはなんとも言えない表情で立ち上がり

ドスドスと狭いキッチンに入って行った





「ヒ、ヒロ?」

「…」

「どうしたの?読んじゃダメだった?」

「…」

「ごめんね。」

「…」














ヒロの動かない背中


ヒロの、何も言わない背中








薄暗い蛍光灯だけの

狭い部屋











今日は、彼の

「リズム」について行けない日なのかも





「…帰るね。」

「…」

「ピラフ食べてね。」

「…」

「おやすみ…」

「…」








きっと仕事で何かあったんだ

きっと、

それでイラついてるだけなんだ

少し、

タイミングが悪かったんだ














玄関を出ようとして

背後の狭いキッチンから

声がした








「HxHってのはぁ…」

「…え?」

「だから、HxHってのは…」

「…うん。」

「まず俺のHIROのH…」

「うん。」





彼はグループでの名はHIRO





「x、H。ってのは…ヒトエのHだ。」

「え…」














心臓が強く強く


ビートを刻む







正常でない


「リズム」を刻みだす





























履きかけの靴




片手に持ったピラフを入れてきたバッグ




狭い部屋に響く時計の音




壁ごしに少しだけ見えるヒロの背中




私の指に光る、私の気持ちの証

















「…ヒトエ」

「…ん?」

「…ピラフ、食ってけよ。」

「…うん。」

「…今、あっためるからよ。」

「あ、私やるよ。」



靴を脱いで上がって

キッチンに入ろうとする



「いいよ、お前座ってろ。」


「…うん。」


「新曲、買えよ。」


「当たり前じゃない。」


「いい曲だからよ。」


「期待してる。」











「…今日、泊まってくか?」


「え?」


「嫌ならいいけどよ。」





「……」





「……」














「……明日の朝、帰る。」








「そうしろ。」













○●Thank you very much!!●○



3500hit踏んでくださったHIROさまへ!
お待たせしました!! え〜と、「R&Bシンガーに恋をする話」というリクでした!
HIROさんのかっこいいHPをイメージに、できるだけ世界に溶け込むよう作ってみました。
が、、、いかがですか?HIROさん。
一応ですね、HIROさんオススメのF.O.HのCDの中のある曲を
原案として使わせていただきました。判りますかね???
「私はあなたのリズムに飲み込まれてしまう、これほどにあなたが好きだけど
あなたは私をどれくらい必要としてくれる?」みたいな彼女の気持ち、
友達以上、恋人じゃないふたりだからこそ、飲み込まれたり飲み込んだり・・・
ちなみに勝手に名前使ってごめんなさい、HIROさん。


HIROさんへ>>壱川ともより。




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