涙の温度

















どうしよう


どうしよう・・・







あの人しかいない








でもきっと仕事中だよね


でも



でもね・・・








ピッ

『北山陽一  090-××××-××××』



「・・・・」




ピッ

RRRRRRRRRRRRRR





「もしもし」








あぁ、

この声だ

すごく安心する







あ、、、やばいよ

ぽろぽろぽろ


「もしもし?めぐみだよねぇ??」

「・・・ようい、」

「めぐみ?めぐみ泣いてるの?」

「・・・ぅ」

「今どこ?」

「よういち・・・仕事は?」

「気にしなくていいから。どこにいるの?」

「いつもの・・・公園。」

「判った。待ってな。あ、危ないから明るい通りに出てなよ。ついたら電話する。」

「ん・・・。」

「じゃ、切るよ?」

「ん・・・ごめんね。」

「いいから。」










ピッ











・・・また、頼ってしまった


いいのかな?

よかったのかな?


こんな私がいつまでもくっついてちゃ

よういち彼女も作れないね

ごめんね




いつもそう思うのに

いつも頼ってしまうのが私


そしていつも

しょうのない男に

捨てられてしまうのが、




わたしなの・・・










悔しかった

本当に愛してたのに


「他に好きな人ができた」


そんなメール1本で切り捨てられた私は

一体どこにいけばいい?







大好きなヒトだったのに







RRRRRRRRRRRRR


ポケットで携帯が鳴る

ピッ


「もしもし。」

「めぐみ?今どこ?」

「あ、、ごめん。通り出てない。まだ公園なの・・・。」

「・・・判った。今行くから。そこ動いちゃだめだよ。」

「・・・はい。」


ピッ





来てくれた

ちゃんと来てくれた







どうして私

こういうヒトを好きにならないんだろう?













***********************************














「他に好きなヒトができた、ねぇ・・・。」

「・・・・。」





よういちは私にコーヒーを買ってきてくれた


あったかくて瞳にしみる




「ほんとに好きだったのに・・・ひどい。」

「うん、確かにひどい。っていうかメール一本で別れようっていうのはちょっとおかしいよ。」

「・・・ん。」

「悪く言うようだけど、そのヒトこれからいい恋愛できない気がするよ。」

「・・・うん。」

「めぐみも前向きにならなきゃ同じだよ?」

「・・・え?」

「あ、いや責めるつもりはないよ。ただ、普通失恋した方がダメージ大きいじゃない?」

「・・・ん。」

「だからこれでどう受け止めるかで、これからが大きく道が分かれると思うわけ。判るでしょ?」

「ん、・・・判る。」

「相手を恨む事から始めちゃうと、すさむ一方だよ。」




そんな事言われても・・・


「じゃ、どうしたら・・・いい?」

「次の恋のためだと思うとかね。」

「・・・?」

「そういう考え方はできないかな。次の恋のためにこの恋は必要だったんだって。」

「うん・・・。」

「そうすればさ、もしたとえば次の恋がめちゃくちゃうまくいった時に、今回の彼に感謝の気持ちすら生まれる気がしない?」

「・・・あ」





そっか、


それは判る

言われてみれば、そうだけど・・・


けど・・・








「あ、けどこれは俺の恋愛論っていうかさ。俺も自分のいいように考えたりするし。今のめぐみに言うよう な事じゃなかったね。」

「え。」

「ごめん。今は頭の整理より、気持ちの問題だよね。」






よういちは

こういうところのフォローもうまいんだ

自分の意見を決して押し付けない





「大丈夫?」


口調が少し変わる


「え・・・?」

「いや、いつもなら少し話すと元気になるけど、今回ちょっと重そうだね。」

「うん・・・まぁ。」

「そんなに好きだった?」

「・・・・・」








よういちの台詞が合図になったように

色んなことが脳裏によみがえった


「彼」が連れて行ってくれた場所

「彼」がくれたものや

「彼」の言葉や

「彼」のくちづけや

「彼」の笑顔、、、




ひどいって思っても


好きの爪痕はとても大きい







しばらく私は

となりによういちがいる事も忘れるくらい

ぼんやりとする



ここから立ち直れる日なんて

くるのかな





色んなものが身体から抜け落ちているかのように

動けなかった







ぽろ、、、


さっきまでさんざん話しながら泣いたのに

まだ涙は残っていたみたい







ぽろぽろ、、、


涙の数だけ「彼」が私の中から消えてくれたら

どんなに楽か・・・











「めぐみ。」

「・・・ん?」

「下心なしだから、何も考えないで受け止めてほしい。」

「・・・へ?」



私が彼に向き直ろうとした時




私は何かに包まれた





よういちの腕が大きくまわされて

私の背中を抱いた







「!!」


持っていたコーヒーは手を滑り落ちて

地面に広がってしみになる








よういちの細い腕は

「彼」のものとは違いすぎて

急に愛しくなる

よういちの二の腕のあたりのジャケットを

ぎゅっと握りしめると

よういちの腕にも少し

力がこもった気がした













ぽろぽろぽろぽろ、、、




涙がとまらない







「泣くなとは言わないから。女の子は、泣いてキレイになるって言うしね。」

「・・・」

「ただ、嫌いにならないで。」

「・・・?」

「恋することを、嫌いにならないで。」






よういち・・・







「今は恐いって思っても仕方ないけど。いつかまた、違うヒトと笑ってるめぐみが見たいから。」





よういち・・・


私は、

あなたと笑える未来が、見たいよ

















その日私は、泣きはらした顔で

よういちと別れた


お礼に今度何かおごってあげる、と

私が少し無理をして笑うと


彼は「無理をしてる」とわかっていても

嬉しそうな顔をして、そして


「期待してる」




と、手を振ってくれた







帰り際によういちは何故か


「てっちゃんが今日くれたんだ。」


と、


私に飴をくれた












帰りながらなめたその飴は







とても、甘くて、甘くて








甘くて甘くて、甘くて











ぽろぽろぽろ








また、涙が出た










でも、さっきよりもずっとずっと、温かい涙だということに気付く








それが嬉しくて、嬉しくて














ますます泣けた














たくさん、泣いた。

















○●Thank you very much!!●○



500hit踏んでくださったmegu.uさまへ!
お待たせしましたv「失恋して北山さんに慰めてもらう」というリクでした。
いかがでしたでしょうか??ご満足いただけたでしょうか??(ドキドキ
少し辛すぎる失恋と、北山さんの温かさを対照的に見せたかったのですが。
北山氏に果たして下心は本当になかったのか!?
ということは、もちろん読んでくださった方のご想像にお任せしていますv(笑)


キタマニのmegu.uさんへ>>

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