white LOVE.











サク、、サク


「はぁ・・・」

吐く息が白い
東京での白い息とは
少し違った深みがある


サク、サク、サク、、

雪を踏みしめて歩く
足を速めて
はなをすする
東京に長い時間いすぎて
こっちの寒さに弱くなってるかな・・・


ふと立ち止まって顔を上げる
自分が人前で歌を歌う事になるなんて
微塵も思っていなかった頃に
無邪気に毎日通っていたピアノ教室の前に来ていた
ここに一緒に通っていた女の子に
俺は恋をしていた、、

もう少し歩くと
中学校が見えてくる
雪に埋もれたような校舎が見えて
その校庭には
はじめて恋人というものができた頃の思い出が
優しく詰まった一本の銀杏の木も立っている

さっき通り過ぎた駅は
俺が生まれて初めて「アイシテル」という言葉を
伝えた女性との思い出
あの頃の恋は
卒業と距離とプライドと、そして少しの寒さに負けて
大切なものを、そっと手放した
あの小さな駅のホームで
俺は生まれて初めて女の人を傷つけ、泣かせた
もう後悔という言葉すらピンとこない今




俺がこの白銀の世界で
当たり前のように愛した人達

今、一体誰のそばで
誰のために微笑んでいることだろう





懐かしすぎる、幼すぎる思い出に
無意識に優しい笑みがこぼれる

あの頃は、こんな風に笑う事も知らなかったよ

不器用に無表情に
温かいその手を放したあの日


たくさんの人を愛して
愛されて
手放して
手放されて

僕はこんなにも
優しい微笑み方を知ったんだ



東京に行ったって
誰かを愛することはやめない
今も、東京で僕の帰りを待っている人はいる

でも
限りなく優しくなれるこの気持ちを
温かい肌と肌で
微笑みで、ぬくもりで
教えてくれたのは

このまっさらな、まっしろな世界
僕のふるさと



一年前の今日
思ったんだ

「来年の誕生日は、青森に帰ろう」って




高校の頃に何度も歩いたこの道で
今立ち止まって十数年間を思う


今僕は
色んなものを手に入れたけれど


どこにいたって
僕のふるさとはここ
ただひとつなんだ

そんな当たり前なことに
ここに来て気づいて、僕は喜びに溢れる







「・・・ありがとう。」


ありがとう。

僕を包んでくれた空
思い出の詰まった木々
涙をさらった風
ふたりを守り続けた雪たち



愛を教えてくれた

この町









「陽一。こんなとこにいたの!風邪ひくよ。」
「あぁ、母さん。」
「さっきこっち着いたばっかでしょ。家でゆっくりしなさい。」
「そうするよ。今から帰るとこ。」
「明日には帰るんだっけ?一日だけなんて何のために・・・」
「うん・・・何となく。雪に触れたくなっただけ。」
「変な子。そうそう、お父さんがまた仕事場からサインお願いされたって。
早く帰って書いてあげなさい。」
「あはは、またか。いいよ。帰ろう。」



いつのまにか少しだけ白髪も増えた母親と
肩を並べて歩き
雪に足跡をつける

こんな事が喜びになる




雪は、まだまだ降り続いている
まだまだこの町を、優しく包んでいる

どうかいつまでもこのままで
僕の大事なものたちを
どうか守り続けて



いつか年老いた僕が

歌う事に疲れて、帰ってきた時も

どうか同じように

僕を守って

また同じように

愛をそっと教えておくれ






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北山陽一様 誕生日おめでとうございます

北山さんの作る曲は、どこか日本的で
大いなる愛に包まれている心地がします。
それは私が敬愛している玉置浩二さんの作る曲に似ていて
寂しさも漂うけれど、聴いた者の耳と心をとらえて離さない
絶大な魅力があります。
北山さんの作った曲がシングルカットとして世に出たのは
「あたらしい世界」('98)ゴスペラーズがデビューしてから
実に4年後の事でしたが、それまでのグループの活動を
音楽家として、大きな力で支えてきた事を
そしてこれからも5人の中の一人、として
大きく強く、ゴスペラーズを支えてゆく力となってゆくと
私は確信しています。

※ページを閉じてください。


PHOTO by[ NOION ]

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