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第 三 話 title Summer vacation!!! このあいだは来てくれてありがとう 翌日は仕事に間に合ったかな？ えっと、タイトルにも書いたとおり夏休みが決まりました 8月12日からなんと5日間、日本へ帰ります 去年ほどはいそがしくないみたいで、藤井さんが許してくれたの そちらの予定はどうですか？ まだわからないか・・・ わたしは、実家には1日だけ帰れば充分だから 思いのほか、時間がありそうです ちょっとした報告も、あるし また連絡、ください。 P.S 藤井さんが暇そうなので、また遊んであげてください（笑） 送信ボタンをクリックして、わたしは自分の送ったメールを読み返すこともせず ぱちりとパソコンを閉じる わたしたちの交信は、電子メールが大半を占めていた 14時間も時差があるのだから当然といえば当然だ だからさすがに携帯のようにはいかないものの てつやは案外マメに返信をくれた 朝起きて、仕事の休憩中、帰宅したとき、寝る前と 時間の許すかぎりわたしの小さなつぶやきに答えてくれていた 藤井さんとてつやは以前会わせたことがあり ふたりはすっかり仲良くなった ふたりが話しているのを見ていると、 「男同士って、こうあるべきなのだな」と納得してしまう ふたりともあっさりとしたタイプで、しかし趣味に熱く あらゆることにおそろしく好奇心旺盛で たがいの持っている知識や経験をあますところなく 吸収しようという一種の興奮が見え隠れする それだけ、互いが魅力的だということだろう 小夜さんと別れたという事を報告しようと思ったけれど 他人の事情を軽々しくメールに書くのは気がとがめ 追伸だけに藤井さんを登場させてみた 本文の「報告したいこと」は、 もちろん私の人事の話だ 「報告」よりも、 「相談」にすべきだったかと、少し後悔する RRRRR ふいに電話が鳴る 時計をみると、時刻は23時をまわっている こんな時間にかかってくる電話は・・・ 「もしかして・・」 つい口にだしてつぶやいて受話器にとびつく 「もしもし？」 「おっ、出るのはえぇな。俺」 「だと思った」 自然と頬がゆるんで、短い返事をかえす やはり、相手はてつやだった 「報告したいことって、何？」 「まだ内緒だよ。会ってくれたら、話す」 「んな脅さなくてもちゃんと時間作るって（笑）」 「あはは」 時差のせいで、電話ができる時間帯は限られているため よっぽどの用事がなければ、電話をすることは少ない わたしはいつも思っていた 耳元でてつやの声がするのに 触れようとすれば、14時間をかけて海をこえなければいけない まるで二人、檻の中に入れられてるみたいだ 受話器のむこうからてつやの独特の笑い声がするたびに わたしの胸はきつくしめつけられた 10年も離れていたのに 結ばれたとたんに声を聞くのもままならない距離に 離れてしまった でも、今の私には 日本に帰る という、選択肢がある 2年前のあの頃も、選択肢はあった でもそれは、アメリカに行くか行かないかではなかった てつやを、好きだと、自分の心で認めるか、認めないか そんなレベルの選択しか、する力がなかったのだ 今、日本に帰るとすると… その選択の先には てつやとの未来が無限に広がっているのだろうか… 今どんなに離れていようとも つながってると感じる気持ちがうれしい 当たり前すぎて気づかなかったけれど わたし達は、自分の意志で手をとりあえる 大人なのだから 「聞いてんの？」 「あ、うん。ごめん」 「お前、貴重な電話の時間をなんだと思ってんだよ」 「ごめんごめーん」 この報告をしたら、てつやはどんな反応をするだろう 喜んでくれるのなら、わたしは・・・ 夏休みにむけて、自然と胸がふくらむのを感じていた |
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