カ ー テ ン コ ー ル













俺は、カーテンコールが本当は嫌いだ



一番最高の大きな拍手がもらえる瞬間
メンバー全員で手を握って並んでおじぎをして
いつまでも、いつまでも手を振って
ありがとう、って叫んで、手を振って


そこから幕の中へ消えていく自分が
悲しくて仕方なかった


それは年をとればとるほど、
会場が広くなればなるほど、寂しさが増して
たまに、感動からじゃない、興奮からでもない
心細い涙が落ちることもあった


だけどそれも、メンバーたちの興奮と熱気と
そのあとのちょっとした打ち上げ
ちょっとしない、大げさな打ち上げなんかに誤魔化されて
悲しみ、寂しさを紛らわしてばかりいた


本当は、さみしかったんだ
舞台から去る自分が




将来が不安なわけじゃない
夕暮れ時は、友達との別れの時間だから嫌いなのと一緒で
あのめいっぱいに照明で照らされた輝いた自分と
鳴り響く拍手と、声援と
それが終わったあとの、静寂が嫌いなんだ













「繊細なんだね」



それを話したら、彼女はやさしく言ってくれた

そして、おいで、と言って手を広げて
照れて動かない俺のそばに寄って
そっと、俺の頭を抱いてくれた



「慣れなくていいんだよ」

「悲しいなら、悲しいままでいいんだよ」



そうして彼女は俺に
変わらないで、と言っているのだ




いつか俺が年老いて、それでも歌うことはやめられず
それでいて、まだ、カーテンコールが嫌いだ、とこぼしたら
またそうやって困ったような、切ない顔をして
抱きしめてほしい













ありがとう、って手を振って
いつまでも、いつまでも、手を振って

そして静寂の中へ消えてゆく俺を
どうか、君だけは見失わないで



いつまでも、見てて















ゴスペラーズの「讃歌」と、玉置浩二さんの「ラストショー」をイメージしました。
お名前は一度も出てきませんが完全に酒井さんです。
わたしの作品のなかでは最も短い作品かな?
結構、気に入ったものになりました。





photo [AhLeuCha]

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