ふたりはいつもこの駅に
ふたりはいつでもこの駅で

さよならを言い合った




「今年会えるの、これが最後だね。」
駅に着くまでの道
俺の手を握って
俯いたまま彼女は言う

「おぉ」
何の感情も読み取られないような
ぶっきらぼうな返事を返す
俺の悪いくせだった

「CD、ありがとう。帰ったらすぐ聴くね。」
俺は彼女にCDを一枚貸した
あげないで、貸したのは
次に会える口実を作っただけだ

「あぁ、13番がおすすめ。」
そんな下心に気付かれないように
適当なことを言ってみる
俺の悪いくせだった


駅までの道は何もなくて
ひとりで歩いたら
きっと長くてしょうがない道のり
いつまでも彼女の手を握っていたかった

でも
その道は、あっさりと終わりを告げて
俺らの別れの駅についてしまう


「一生会えないわけじゃないのに。」
自分を励ますみたいに言う彼女

「そうだよ。おおげさな別れじゃねぇんだからさ。」
自分を慰めるみたいに言う俺


相手の目に見えない涙をぬぐえるほど

大人になれなかった俺たち



「また、来るから。」
「あぁ来いよ。」
「次までにもっと料理練習しとくから。」
「頼むわ。」
「それから・・・」
「もういいよ。電車来るぞ。」
「・・・うん、そうだけど。」

いかにも別れを連想させるような
彼女の言葉たちを
俺は最後まで聞くことができず遮った


彼女は少し寂しそうな顔をして

そして

俺の手をゆっくり、ゆっくりと
離した

彼女の手の触れていたところ全てが
冷たくて、一瞬で風がすりぬける


「行くね。」

「・・・家ついたら、電話しろよ。」

「うん。」

「じゃあ。元気で。」

「てつやも。」

「おぉ。」

「じゃあ、ね。」

先に背を向けたのは彼女で
俺はその背中を数秒見送ったけれど
すぐに背を向けた

数歩歩いたあと
背中のうしろで彼女が振り返っているのに
気付いていたけれど
俺は振り返らなかった

もう一度振り返って
彼女を安心させてやるだけの
笑顔をつくれるか自信がなかったから

ただ振り返ってやるだけで
それだけで安心させてやれるのに
それに気付いたのは
もう少し後、俺が大人になってからだった














その日、彼女から電話はこなかった

携帯なんて持ってる時代じゃなかったから

俺はひたすら彼女の自宅に電話をしたけれど

彼女に取り次いではもらえなかった

それが本当に偶然留守だったのか

それとも居留守だったのか

わからないまま、時が過ぎて

数日後、彼女から少し厚い手紙がきた

手紙だと思っていたそれに

手紙は一枚も入っていなくて

俺の貸したCDが

割れないように布に包まれて入っていた




会いたいのなら

会いに行けばよかったんだ

泣きたいのなら

泣けばよかったんだ

近くにいなきゃ続かないのなら

離れなきゃよかったんだ



もう少し、もう少しだけ

大人になれれば

ふたりの距離はぐっと近づいたに違いない







ふたりはいつもこの駅に

ふたりでいつもこの駅に

ふたりはいつでも、この駅で





今、俺はひとりこの駅で・・・












「俺の新大阪」のてっちゃん回想バージョンです。
少し前に「俺の新大阪」更新時にお客様からてっちゃんの過去が
知りたいですっていう要望が多かったのを思い出して
書かせていただきました。
現在のてっちゃんが出てくるのは最後の一行だけですけどね。
今でも、この駅にくると思ってしまう人がいる、みたいな。
別にこの駅が新大阪っていう設定はありません。
「"俺の"新大阪」ですから。
みなさんそれぞれあるでしょう?別れの場所。
「"私の"新大阪」。ありますか???


※ページを閉じてください

photo 朱萌

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