真実    vol.7

























「そんじゃ、ツーショットに乾杯!」



森田と俺は、いつもの呑み屋で
ジョッキビールを豪快に飲み干した



「いや〜〜〜まさかあんなアッサリと撮れるとはねぇ。
君島って結構ガード甘いのな」


森田はこれ以上ないほどのご機嫌な顔で
ビールを気持ちいいほどすいすい飲んだ

俺がただ笑みを浮かべてるだけで
店に入ってから実は一言もしゃべってないことにも気づいてない


「いやマジでさ、あんなオイシイ情報どこから仕入れたわけ?」

「・・・それは聞かない約束だろ」

「なんだよ〜相棒だろ?教えろよ」

「相棒といえどもライバルだからな」

「ちぇっ、お前にはかなわねぇよ。仕事も、恋愛も」

「なんだそれ」


俺は軽く聞き流したつもりでいたが
森田は、顔色は立派な酔っ払いなのに
それに不釣合いな神妙な顔つきになる



「・・・早乙女のこと、ちゃんと振ってくれたのか?」

「あぁ、今日会社引き上げてすぐ家にいってきた」

「なんて言ったんだ」

「好きな奴いるからって」

「あぁ、そう・・・そんなら・・・」



森田はあからさまにほっとした顔になる


・・・そういうことか・・・


俺はようやく、早乙女のことを
なぜそんなに森田があれこれ詮索していたのかがわかった




「まぁ、しょうがねぇべ。
あいつはお前が好きだったんだ。それだけのこと!」



自分が今まで森田に聞かせてきた
彼女の気持ちを投げ捨てるようなセリフを思い返す


俺という男は・・・



「なんか・・・悪かったな。俺、全然気づかなかった」

「あーー、いいってことよ。
お前がふってくれたおかげで俺にもチャンスが巡ってくるかもしんねぇし!」


そう言って森田はつまみの唐揚を指でつまんで
口のなかに放り込んだ




「で、本題に戻るけどさ。お前好きな子なんていたの」

「どこが本題なんだよ。べつに、それは口実だよ」

「じゃあほんとの理由は?」

「それは・・・」


早乙女のことが好きな森田に向かって
”なんとなく、だめなんだ”
なんて言うのはすこし気が引けた
そもそも自分でもわからない理由を
どう説明しろというんだろう



「いるんだろ?好きな子」

「・・・いや」

「いるんだろ?」

「いないって」

「なんだよ堅いな。腕相撲負けてやるから言えよ」

「ばかやろ、そんなのうれしくねぇっつーの」

「いや、冗談抜きにさ・・・
別に隠さなくても、お前がなんとなく秘密主義的なのはわかってるし。
さすがの俺も無理には誰だなんて聞かないしさ」

「・・・別に秘密主義ってわけじゃ」

「俺は早乙女がふられた本当の理由が、知りたいだけ」



そう言われてしまうと
自分でも一番近くにある答えを言うほかない
秘密主義ではないけれど
俺はどこかで人に全てをさらけだすのを恐れてた
森田みたいに、笑いたいときに笑って
好きな女の話を人に聞かせることができたら
どんなにか楽しい人生だろうと思う



そして今、こんな話をしている最中も
頭に浮かぶ人物はただ一人だった






「・・・いるよ。好きな奴」


俺がそう言うと
森田はにやっと笑って、呑み屋の主人にビールを追加する


「そっか。そっか!」


森田は終始うれしそうに酒を飲んだ





俺はというと
無表情を決め込んでビールを飲み続けたが
心の中では完全に目を覚ました思いが
爆発寸前だった

















俺は、淳子を守る




守ってみせる

















俺は、森田がトイレに立った隙に

森田のバッグから淳子の秘密が隠されたカメラを引っ張り

手際よくフィルムを抜き取った























































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