思い出

















出発まであと5日に日が迫っても、仕事は相変わらずの量だった
毎日しっかりと残業して帰るし、
出発前に一度実家に帰るはずだった予定もたたずじまいだ
最近はアメリカに同行する藤井さんと共に仕事をする時間が増えた


「いいなぁ藤井さんと一緒に仕事ができて」

早紀はうっとりした目で
離れた席で食事する藤井さんを見つめた
片手にはデザートのパンナコッタのお皿

「でももしわたしなら緊張して舞い上がって仕事どころじゃないかも」
「話したことはあるの?」
「まさか!」

早紀は顔の前でぶんぶん手をふる
照れ隠しで笑ってはいるけど、目は笑っていない
はじめはミーハーなノリで言っているだけかと思ってたけど
どうやら案外早紀も本気らしい


「じゃあ、今度三人で一緒に食事でもする?」


早紀はわたしの言葉に一瞬唖然とする
そして身を乗り出した


「い、行く!!!」


早紀のあまりの勢いにわたしはつい吹き出し
すぐに我に返った早紀も笑った





「そういえばの再会した初恋の人ってどんな人なの?」

突然に早紀は切り出した
身を乗り出して目を見開く
早紀はもとから瞳がやたら大きくて
いつもその目はキラキラと輝いていた
まるでチワワみたいだ、と私はいつも思う

「どんな…か。とりあえず強引」
「え、まさかM?!」
「そうなのかな(笑)」
「ほかには?」
「そうだなぁ…」



真剣に考えはじめると、 自然と出会った頃を思い出す



























てつやとはじめて出会ったのは高校2年
わたしは学校帰り
いつもは車で送迎がくるのだけれど
その日に限って運転手が体調を崩し、
駅まで歩いていて某大学の前を通りかかる

時計台の前で自由に歌う彼らに、わたしは目を奪われた

特定の音楽に興味をもったことはなかったけど
彼らの楽しそうに、自由に歌う姿に見とれた
音楽性より先に、歌を歌う姿勢に惚れた

立ち尽くしているわたしに
歌い終わったてつやは言った



「座れば?」



この人がリーダーだと直感した

「君、制服だから特別にもう一曲」
とわけのわからないサービスをしてくれて
路上に座ったことなどなかったわたしは
迷ったあげく、ハンカチを地面に敷いて座ると
てつやは子供のように”遠足かよ”と言って笑った

その笑顔に、ついつられて笑顔を返した
わたしは名も知らぬ人に笑いかけたのは
それが生まれてはじめてだった





「またここにくれば、会えますか?」


わたしはまた彼らの歌う姿が見たくて、
終わったあと、ついそう尋ねていた
そんなふうに見知らぬ人に
もう一度会いたいなんて意志を伝えたのも
わたしにははじめてのことだった

それなのに、この時
こともあろうにてつやはこう言った


「それ、ナンパ?」


















「あと、基本的にデリカシーがないかな」
「はぁ?」

早紀は思い切り怪訝な顔をする

「そんな人、いいか?」
「うん(笑)いいのよ、天然のデリカシーのなさだから」
の趣味って変わってるかも・・・」
「そうかも(笑)」


















次に会ったのは、あの日から一週間後くらいだったと思う

運転手に頼んで何度もそこに立ち寄ったけど
ずっと彼らには出会えなかったのだ

彼らをついに見つけた日
「止めて!」と運転手に叫んだ
車で送迎してもらっていることが知られたくなくて
すこし遠くで降ろしてもらう

彼らに駆け寄ると
てつやは一番にわたしに気付いて笑ってくれた
わたしはとても、満たされた気分になった
人の笑顔がこんなにもうれしいものだってはじめて知った


わたしには何もかもがはじめてだった



















「あと、笑顔がかわいいの」
「あぁ、それはポイント高いね」

早紀はいつの間にか真剣になって
わたしの初恋の人を想像している

まさかゴスペラーズのリーダーだなんて言ったら
驚いてこの場でどんな奇声を発するかわからないから
黙っておこう


















その日、親に怒られることを承知で
わたしはこっそり運転手を帰らせた
彼らの歌を最後まで心おきなく全部聴いて帰りたかったから
ひとりで、聴きたい気分だったから




歌いおわるとてつやが私に近づいてきた

「まさかほんとにまた来てくれるとはね」

少し緊張して、はにかんでいると
てつやはうしろのメンバーに向って言う

「お前ら先に戻ってて」

仲間が冷やかすのも気にせずに
てつやはさらりと”送ってくよ”と言った





駅までの道を、肩を並べて歩く
てつやはその時からすでに、私よりも20数cm背が高かった


「高校生だよな?」
「はい」
「どこの制服それ?」
「S女です」
「あぁそうそう。S女だ」


と言いながら、
てつやは”オヤジかよ俺は”と笑っていた


「今度学祭でまた歌うけど、来る?」
「行きます!」
「元気だな。じゃあ連絡先おしえて」
「え・・・」


てつやの軽いものの言い方に
つい警戒して顔を見返す


「携帯もってる?」
「いえ」
「そっか」


てつやはそれ以上聞かなかった
もし家の電話番号を聞かれても教えなかっただろうけど・・・




駅についてわたしが送ってもらったお礼を言うと
てつやは返事をせずに
まだなにか言いたいことがありそうな様子で
じっとわたしを見下ろしていた


「あの、何か・・・?」

わたしが尋ねると、てつやは言いづらそうに
低い声で言った

「運転手、よかったのか?」
「・・・見てたんですか?」
「あぁ、車降りるとこから気付いてた」
「・・・」
「別に隠すことじゃないだろ」
「だって・・・」
「だって?」
「あんなこと、恥ずかしい」
「そうか?」
「世間知らずだと思われたくないの」


その時たしか、てつやの眉がぴくりと動いて
わたしの話に耳を傾ける姿勢になった


親の目が厳しくて
その年代の男の人とはまともに話したことがなかったのに
てつやを怖いとは全く思わなかった
てつやの風貌は間違っても柄がいいとは言えず
それでもわたしは、不思議とこの人を信用できると思った


わたしの話を聞いてくれる
自由な精神を持っている
ステキな笑顔をくれる
それはわたしを安心させ、満たしてくれる
そしてきっと、わたしに知らないことを教えてくれる

この人といると、しあわせな”気がする”・・・






わたしはその時、
17年間生きてきて最も大胆なことを言った




「あなたの電話番号を、教えてください」






























「え!逆ナン!?」
「ちょ、ちょっと、早紀、声が大きいって!」

わたしたちは二人であたりを見回す

、意外に行動派ね〜」
「自分でも信じられないわよ、いまだに」
「そのときから好きだったの?彼を」
「・・・どうだろう。ただその5人の中でも一番目に止まったのは確かかな」
「それ、ポイント高いよ」
「早紀、さっきからポイントばっかり。今何ポイント?」
「150ポイント」
「マジ?」
「マジ」


私達は笑いあった

こんなふうに、友達と恋愛話をするなんて
すこしまえの私では考えられなかった


































「本当に電話してくるとはね」

電話口でてつやはうれしそうなため息をついた

「もう一度聴きたくて」
「歌?それとも俺の声?」
「・・・歌」
「はは、そうかよ。学祭は再来週の日曜な。友達連れてこいよ」
「ひとりで行きます」
「なんで?」
「だめですか?」
「別にいいけど」


たった二度会っただけで
こうしてこっそり電話をかけて、話をしてる
なんだかそれだけで、親密になれた気がしてた


それから学祭までの2週間
いいと言われてるのに、ちっとも敬語をやめられないわたしに
呆れながらもてつやはずっと電話をつきあってくれたし、
高校生のおしゃべりなんて、大して面白くなかっただろうに
てつやはわたしが電話をすれば必ず出てくれた
大学にも何度か足を運び、会える日もあれば会えない日もあった
でも会えば、惜しみない笑顔をくれた
そのたびに、心が満ちていくのを感じる



この人が、わたしを変えてくれる



漠然とそう思ってたんだ























学祭の日
わたしは言ったとおりひとりで大学に赴いたけど
ついてすぐに後悔した

お祭は思いのほか賑わっていて
とにかく人がたくさんいて、騒がしさと熱気に酔ってしまいそうだった

友達とくればよかったかもしれない

このまま人ごみの中を
あの人だけを探して一人で突き進むのは
なんだか無謀な気がするし
普段、家と学校に守られている高校生(私は特に守られすぎている)にとって
ここはなんだか無秩序で、怖い気持ちすらした

しばらくキョロキョロしたあとに立ち尽くして、
わたしはため息をついて引き返した




帰ろう。
親には塾で自習学習してくると言ってある。
やっぱり塾にいこう。









正門にむかって歩き出した、そのとき

ぐい、と右腕を掴まれた






「ひゃっ・・・」



つい間抜けな悲鳴をあげると、
腕をつかんでいるのはてつやだった

頭に白いタオルを巻いて長い髪をまとめていて
お酒を飲んでいるのか顔は真っ赤で
駅まで送ってもらったときより、体も大きく見えた



「どこいくんだよ?」
「・・・帰ります」
「は!?なんで?今来たんだろ?」
「そうだけど、なんだか怖い・・・」
「なぁにが怖いんだよ」
「だって、みんなお酒飲んでるし、騒いでるし」
「許してやってよ、お祭なんだからさ」
「・・・」


わたしは、なんだか頑なな気持ちになっていた

怖い、という言葉は
ほとんどてつやを批判するつもりで言ったのに
てつやは酔っていてあまり感じていない
そのことに、なんだか無性に苛立っていた



「どしたの」

陽気に話していたてつやも
わたしの様子に気付いて真顔になる

酔って真っ赤なのに真顔
そのギャップが滑稽で
もっと困らせてやろうって気持ちになる


なんて子供なんだろう。
わたしはこの人のなんでもないのに。


心の中では、ちゃんとそのことがわかっていたのに
止められなかった


「わたし一人帰っても、変わらないじゃない」
「は?」
「こんなにいっぱい仲間がいて、一緒にお酒飲める友達いて、
 お客さんだっていっぱい入るんでしょ?わたしが無理して居なきゃいけない場所じゃないわ」
「・・・」


てつやは、掴んでいたわたしの腕を離した
自分でひどいことを言っておきながら
それだけで、急にこわくなっててつやを見上げる

てつやは無表情だった


「なんだよそれ」
「・・・」


謝るなら今しかないのに、言葉が口から出てこない


もう、わたしって
本当に、どうしようもない子供なんだから

わたしは自分にうなだれる
てつやはそのまま去ってしまうと思った
呆れて、怒って、いなくなってしまうと思った


あぁ、生まれてはじめて、わたし人を好きになれたのに・・・

自分の初恋に気付いたとたんに失恋だなんて
わたしって本当に不器用だ・・・








泣きたくなっていると
てつやはもう一度、今度はさっきよりもずっと強引に
わたしの腕をつかんだ


「・・・ちょ」
「ちょっと来いよ」


てつやは怒ったような口調でそう言って
黙ってわたしをひっぱって、大学の敷地内にずんずん突き進んでゆく




わたしはこわくなっていた


やっぱり、こんな得体の知れない大学生にのこのこ会いに来るんじゃなかった
こんな酔っ払いの大男怒らせて、
なにをされるかわかったもんじゃない


こわかったけど、もはや声もでない
てつやはひたすら私を連れて、歩いた






「そこ、座ってろ」

着いたのはすこし古めの建物の入り口で
やっぱりそこでも、大学生が慌しく走り回ったり
笑ったり、飲んだり、歌ったりしていた
衣装姿らしき学生も多く、どうやらそこは稽古場か芝居小屋のようだ

てつやはその人波をぬって行ってしまい姿を消す




ひとりになって、とりあえず座れと言われたので
入り口の石段に腰掛ける
掴まれていた腕をみると、ほんのすこし
赤く痕が残っていた


男の人って、力が強い・・・


そう思ってまだすこし震える右腕を
そっと左手でさすっていると、うしろから声がした




「だぁから、ちょっとでいいから!早く来いよ!」

てつやの声と
もうひとり、別の男の人の声がする

「なんだよ俺昼飯食ってねぇんだよ!舞台のチェックもあるし、俺演出なんだぞ!?」
「知るか!午後の客一人逃すかもしんねぇんだぞ」
「え、客?」

声のあとに姿を現した男の人は
大学の前でいつもてつやと一緒に歌っていたなかの一人だ



「あ。どうも」
その人はわたしに軽く会釈をしたけれど
それは初対面の人にするようなそれではなく
明らかにわたしのことを覚えているやり方だった

「わたしのこと覚えてるんですか?」
「当たり前っすよ。大事なお客さんの顔、忘れるわけないって」
「・・・」

てつやはそこまで見守って、すぐに口を開く

「はい、お前もう戻っていいよ」
「はぁ!?そんだけ!?」
「飯食ってこい」
「なんだよテツ、彼女見せびらかしただけかよ!」
「余計なこと言うなっつーの、てめぇ!」

その人は、てつやにどやされるのを慣れた感じによけながら
人波に消えていった




”彼女見せびらかしただけかよ”


彼の言った言葉が、もう一度頭の中を響く




「わかった?」
「・・・え?」


突然の嵐のような出来事に呆然としている私に
てつやが尋ねて、わたしはてつやを見上げるけれど
てつやの顔も、声も、まだ怒っている


”彼女”
やっぱりあの人が、勝手にそう言っただけだ・・・
わたしの心に、また暗い雲がたちこめる

わたしが黙ったままうつむいてしまうと
てつやはため息まじりに話し出した




「お客はな、何人いればいいってもんじゃないの。
 誰がいればよくて、誰はいなくていいとか、そういう問題じゃないわけ」
「・・・はい」
「少なくとも俺らのグループは、一度拍手をくれた客の顔は絶対忘れない」
「・・・はい」
「お前が学祭くるって言ったら、メンバー全員大喜びだったんだぜ」
「本当?」
「ほんとだよ。お前が帰ったらあいつらがっかりする。俺も」

ドキリとする

「わかった?」
「・・・わかった」
「ま、酔っ払いばっかで怖いかもしんねぇけどさ。みんないい奴らだから。
 お前の親父さんだって酒くらい飲むだろ?おんなじだよ」

なんだか無茶な理屈だったけれど
事実、わたしの心はすっかり落ち着いた
てつやの顔に、笑顔が戻ってきていたからだ

「あ、でもさっきのあいつが言ったこと。あれだけはごめん」
「へ?」
「お前のこと彼女だって。不愉快だっただろうけど、あいつの勘違いだから。あとでちゃんと言っとくからさ」


そう言って、てつやは顔の前で右手をたてて謝るポーズをして、
またあの子供のような笑顔に戻った







わたしの中で、はじめての恋、はじめての感情で
もやもやとはっきりとしなかった気持ちが
急に雲が晴れたようにくっきりと形が見えた


















わたし、この人が好きだ。


さっき、あんなにも苛立ってしまったのは
彼の生活の中にわたしがいないことを思い知らされて
悲しくてたまらなかったからなんだ
彼があんなに仲間に囲まれながらも
どれだけわたしのほうを向いててくれるか試したかったんだ

一瞬でも、その人ごみに埋もれてほしくない

ずっと、隣にいてほしい





わたしは、てっちゃんが好きなのだ。

























ライブが終わったら打ち上げあるから、怖がらずに、来いよ。


てつやはそう言ったけど
わたしはやっぱり、なんとなく気が引けていた

打ち上げといったらやっぱりみんなお酒を飲んでいるだろうし
そんな人たちに囲まれてこれ以上過ごしたら
家に帰ったときにさすがに匂いでバレてしまうかもしれない

会場(と言ってもそこも芝居小屋のような建物)の前で座って考えたけれど、
ライブの感動と興奮の熱が、最後までわたしを引きとめていた




!」


息をきらしたてつやが迎えに来た


「よかった〜!帰ったかと思った」
「・・・うん」
「なにもこんな誰もいないさみしいとこで待ってなくてもいいのに。
 行こうぜ、裏の稽古場だから。もうみんなはじめてるけど」
「あの・・・」


やっぱり帰ろう、という気持ちになっていた

もちろん、てつやががっかりするだろうことはわかるし
誘ってくれたこともうれしかった
でも、やっぱりこんなところに来ていることを
あとで親に知られるのが一番こわかったし、
なにより、今てつやがこうして迎えに来てくれたことで
充分すぎるくらい満足だったから


「やっぱり、打ち上げはやめとくわ」
「へ?」
「誤解しないで。怖がってるわけでも、遠慮してるわけでもないの」
「・・・じゃあ、なんで?」


てつやの表情がさっきよりも曇る




『せっかくライブを終えて、いい気分でいるのにぶち壊したくない・・・』




と、とっさに思った わたしは必死で言葉を選んだ
でも、どれも陳腐で冷静で
今のてつやには聞かせられるものじゃない


親が・・・なんて、たとえそれが事実でも
今のてつやの気持ちを冷ましてしまうものには変わりない

もちろん、わたしの気持ちも・・・































































「好きなのっ」












自分の耳と神経を疑う


わたしは必死に言葉を探した挙句
こともあろうに、なんの脈絡もなく告白してしまった






「はい?」


てつやは、酔いや熱どころか、まともな思考回路までショートしたような
すっとんきょうな声をあげる


「あ、いや、だから、ちがうの!ち、ちがわないけど・・・」
「へ?」
「さっきの、彼女の、じゃなくて・・・彼女だって勘違いしてるって、あれ、うれしかったの」
「・・・あの、
「あと、ライブ、すっごくよかった!感動した!こんなに興奮したの、はじめて!・・・それから」
、落ち着けって・・・」
「それから、さっきはひどいこと言ってごめんなさい・・・こわかったのは、てっちゃんや皆じゃないの。
 自分なの。てっちゃんの世界を知ってショック受けるのが怖くて・・・てっちゃんを、す、好きって、認めるのがこわ・・・」






































散々だ

こんな子供じみたことばかり並べて

順序もめちゃくちゃだし、どもってるし、最悪だ














けど、そんな言葉たちをてつやは全部すくいあげてくれた








その唇で



























「・・・」

「落ち着け」



唇を離すと、てつやはまずそう言った

わたしは、何がなんだかわからない頭で、ウンウン、とうなづく




「・・・って、俺も落ち着け」




てつやはそう言ってうなだれるので
わたしはつい吹き出してしまって


それを見たてつやも、安心したように、照れたように またあの子供のような笑顔を見せてくれた











「じゃ、今日はこれで」


そう言うわたしに、てつやはさみしそうに笑って
わたしの頭にぽん、と手をおいてなでると


「明日、塾の帰り駅まで迎えにいく」


と言った


「・・・これから毎日、絶対に迎えにいくから」






































「ダメになっちゃったんだけどね、その後すぐに」


わたしの言葉を一言も聞き逃すまいと
早紀は大げさなほど真剣に聞いてくれた

細かい話はあまりしていない
ただとても好きだった、ということだけを説明した






その声がとても好きだった、ということ
その笑顔がとても好きだった、ということ
その手が、瞳が、すべてが好きだった、ということ
そして今も、それは鮮明に生きていて
わたしの心をこんなにも満たしているということ。



・・・ただそのことだけを












・・・」

早紀が心配そうにわたしの名を呼んだとき
はじめて自分が涙していることに気付く



「やだ、どうしたんだろう」


涙をぬぐうけど、
それが温かい涙だということもわかってる


わたしは今、てつやのことが
こんなにも好きなんだと気付くだけで
こんなにも温かい涙が止まらないのだ






、うまくいくといいね」

「ありがと」















大切な、大切なわたしの思い出


10年間、つらくて封印していたけれど
そんなこともうしなくてもいいんだ






わたしは明日、てつやに会いに行くんだから



























































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