浩二























「多分…いや、きっと。」





てつやの言葉が、ずっとずっと

私の心をとらえた




切なくて切なくて

話したいことはたくさんあるのに

10年の時が私達を邪魔してうまく動けない



微妙な距離感を保ったまま

それでも着実に、私はてつやに近づいてしまっている




朝起きても、準備していても

仕事に行くときも、仕事をしていても



わたしはてつやの「来週」を待ちわびてしまっていた















!」



社員食堂で、聞き慣れた声に呼び止められた



「浩二。」

「おはよ。どうしたボケっとして。」

「ううん、なんでも。」

、今日空いてるか?」

「空いてるけど…」

「飯食べにいこうぜ。ちょっと話もあるし。」



いつもの笑顔の浩二

じゃあ、18時にロビーで、と言い残して

浩二は仲間のもとへ戻っていった



その背中を呆然と見つめる



寂しいから、浩二の背中を見るのは嫌いだったのに

今はなぜだかホッとする

目を見て、向かい合っていると私の本音が伝わってしまいそうだから



その背中から目をそむけて

私はため息をついて、いつもお昼を一緒にとる早紀の姿を探した











定時の合図が鳴ったとき

ほぼ同時に課長に呼び出された



”すぐに行きます”と課長に告げて

わたしは浩二にすばやくメールを打った






『課長に呼ばれたからもしかしたら遅れるかも。やっぱりお店で待ち合わせにしよう。』

















































































!こっち。」





浩二が手をあげて私を呼んだ

いつものイタリアンのお店

どうやらいつもの窓際の席はとれなかったみたいで

すこし奥の個室の席に通された





「ごめんね、遅れて。」

「いいよ。注文まだだから、先に選んで。」

「うん。」





メニューを差し出す浩二



なんだかいつもより笑顔がまぶしい気がするのは

わたしが同じだけの笑顔を返してあげられないからかな…



なんて、後ろ向きなことを考えながら

メニューをとりあえず決めて注文をすませる





そうしてから気づいたけれど

浩二は先にビールを頼んでいてすでに飲んでしまっていた



「…どうしたの?」

「え?何が?」

「飲んじゃって。」

「あぁ、これ。別に、なんとなくさ。」





そうは言ったけれど

浩二は見てわかるほどに上機嫌だった





逆に私は落ち着かなくて

なんとなくお水を飲む





「課長、話なんだったの?」

「…あ、えっと。浩二、何か話あるんでしょ?聞いてから言うよ。」

「なんだよそれ〜。気になるじゃん。」

「いいじゃない。浩二の話、先に聞かせて。いい話?」

「そう言われると話しづらいけど…まぁ、いい話、になるといいけどさ。」

「何なに?」



内心落ち着いていないけど

興味のあるふりをしてみる





つくづく私って、なんてつまらない女なんだろう














「これ、なんだけど。」















浩二は渋った顔をしていた割には唐突に

テーブルの上に小さな箱を取り出した





ふりをしていた私だけど

さすがにそれを見て作り笑いもいっきにひいてしまった





色んな思考がいっきにかけめぐる























一番に脳裏をよぎったのは、小1時間前に課長から聞かされた話と


浩二のうれしそうな顔と、仕事のことと











…そして、てつやの事























てつや…   てつや…







てっちゃん……

















































































「結婚しよう。。」

































































































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